「格安SIM」という言葉、ご存知ですか?通信やスマホの料金事情に詳しい方ならご存知でしょうが、そうでない方も、聞いたことがある方が多いかもしれません。「格安SIM」は、格安な通信サービスを提供している事業者を指す言葉として、なんとなく世の中に馴染んだようですが、私としてはムズムズするのです。
だって、「SIM」って、「Subscriber Identity Module」の略称で、日本語で言うと、加入者識別モジュールというらしいじゃないですか。「SIMカード」は手の指の腹に載る位の小さなチップで、通信会社が加入者を識別するため契約者に貸与しています。「SIMカード」は携帯通話サービス上必要な部品みたいなもので、安いも高いもありません。それを、「SIM」が安いかのように、「格安SIM」というのはなんとなく違うんじゃないかなぁ、と。
この、なんだかスッキリしない「格安SIM」という言葉が登場したのは2014年頃からではないでしょうか。それ以前は、一般ユーザーは大手携帯会社と契約して音声通話やデータ通信を行っていましたが、2014年頃から安いプランを持った通信会社と契約できるようになったからです。ただし、大手携帯会社以外と契約するには「SIMフリー」のスマートフォン端末を準備する必要がありました。当時、携帯会社で販売されたスマートフォンは「SIMロック」されているのが普通で、SIMカードを差し替えても同じ通信会社のSIMカードでないと動作しないよう囲い込みがされていたのです。外でインターネットを使いたいけれど、高い通信料に苦しむ多くのスマートフォンユーザーは「SIM」という新しい言葉に強い興味を抱くようになります。そして、「SIMフリー」端末の紹介や格安通信プランを比較解説する本や雑誌が次々と登場。本の表紙に大きく「格安SIM」と載るようになりました。あれから10年近く経った今も「格安SIM」というタイトルの本は出版され続け、大手携帯会社以外の通信会社のことは「格安SIM」で通じるようになりました。もうすっかり「格安SIM」は『「格安SIM」事業者』として定着した模様です。
では『「格安SIM」事業者』に変わる本当の言葉というと、格安通信プランを提供しているMVNO(Mobile Virtual Network Operator : 仮想移動体通信事業者)になるのではないでしょうか。MVNOは、通信設備を持つ会社から、ネットワークを借りて携帯電話サービスを提供している事業者です。MVNOは設備を所有せず、借りているだけだから比較的安く利用できるというわけです。ただ、このMVNOって言葉、少し覚えにくいというか馴染みにくいというか。ちなみに通信設備を持つ大手携帯会社はMVNOからV(Virtual)が抜けてMNOといいます。MVNOとMNO、並ぶとややこしい…。となると、「格安SIM」で通じるなら「格安SIM」でいいじゃん、という気もします。
今では大手携帯会社、MVNOともに、いろんな通信プランがでています。そして、比較してもMVNOが特別「格安」ってほどでもなくなったなぁ、という気がします。ただ、通信料が手頃になったのはMVNOとMNOの各社の競争があるからでしょう。「SIMロック」の制限や料金プランの縛り(違約金)もなくなってきましたし、いろんな通信会社が選びやすくなってきました。これからも「格安SIM」ガンバレ!